マグロの部位一覧を図解で説明!これであなたもマグロマイスター
2018.08.12
> コラム> 【マグロの知識】天然・養殖・完全養殖・畜養の違いを知っていますか?
2018.07.16
赤鮪
みなさんがよく口にするマグロには「天然」と「養殖」があることはご存じだと思います。
スーパーでマグロの刺身を買うとラベルに書いていたりしますよね。
その違いも「天然なら海で釣ってきたんでしょ」とか「養殖なら稚魚から育てているんでしょ」など、ある程度想像が付くと思います。
実際にその通りで、天然は人の手が一切加わらずに大海原で育ったマグロ。養殖は卵、もしくは体長数cmの稚魚から餌を与え育てたマグロのことです。
では「畜養」のマグロってご存じですか?
畜養はある程度まで育った若魚を海で捕まえて出荷できる大きさまで育てる方法です。
マグロ業界では「天然」「養殖」「畜養」の3つの育て方が明確に分かれています。
その違いと特徴についてご説明します。
「天然」と聞けばマグロに限らず何でもおいしいとイメージする人は多いはず。
しかし一概に天然だから旨い、養殖だから不味いというのは間違いで、同じ夏の本マグロでも天然と養殖では後者の方がおいしいと感じる人が多いです。
それは天然本マグロの旬が一般的に冬であり、夏はトロが少なく養殖の方が脂が乗っているからです。
ではこれから育て方の特徴や主な水揚げ漁港、ブランドマグロについて詳しく説明します。
天然のマグロとは大海原で大きく育ち捕獲された野生のマグロの事です。
回遊魚のマグロは産卵やエサを求めて広い海を泳いでいるためアスリートの様な体をしており、脂が少なく赤身が多いです。回遊しているため近海でも旬が少し違います。
ご紹介している他にも漁港は多くありますが、主な港とその特徴をご紹介します。
旬は9月~12月で主に一本釣りで漁を行います。
大型のサイズだと、1尾毎に港に戻らざるを得ず、最も手間のかかる方法となります。
漁も豪快なためテレビで取り上げられることが多く、目にする機会が多いため「マグロと言えば大間」と言われるようになったのでしょう。
冬場の餌はイカ・サバ・サンマ等の脂の乗っている餌を主食としているため、旬の大間のマグロは脂が乗っています。
大間とは津軽海峡を挟んで対岸にある函館の戸井。大間との距離はその差約20km。
大間の一本釣りが有名で、あまりスポットライトが当たらないですが釣っているマグロは同じ津軽海峡のマグロ、おいしくないわけがありません。
さらに戸井のマグロは品質が日本一とも言われ、はえ縄漁で釣った直後に船上でマグロを締めて血抜き、氷水で冷やす作業をしてから港に戻るため鮮度が保たれマグロの劣化を抑えます。
はえ縄漁とは幹となる太いロープに針と糸を何kmにも渡っていくつも垂らして釣る漁法です。
引用元:宮城県北部鰹鮪漁業組合
一本釣りを何キロにも渡って行っていると想像すればわかりやすいかと思います。
一本一本の針に餌を垂らすためコストが高くなる漁法です。
近年では近海を回遊するメバチマグロやビンチョウマグロが豊富に水揚げされ、1年を通してマグロを楽しめる漁港です。
県外のマグロ漁船が銚子港で水揚げをする場合も多く、マグロを含めた魚の水揚げ量は平成29年までの7年間で1位を獲得し続けています。29年に限って言えば、2位の焼津(静岡県)に12万7282トン差をつけ、全国1位となっている。
日本の冷凍マグロの約50%は清水港に水揚げされ、冷凍まぐろの水揚げ量は全国一位です。マグロにかける一世帯当たりの年間消費額も静岡が全国一位。
さらに数々の有名ツナ缶メーカーが静岡県に集中しています。
勝浦は生マグロの産地として有名です。主に、はえ縄漁で水揚げされます。取れるマグロは本マグロ・メバチマグロ・キハダマグロ・ビンチョウマグロで本マグロ以外は通年水揚げがあります。
釣り上げたマグロは戸井のマグロと同じですぐに締める処理を行い冷水保存され鮮度を保ったままマグロを届けることが出来ます。
人口およそ6,000人の勝本町では本マグロの一本釣り漁として有名です。
一本釣りと言えば「大間の本マグロ」を思い浮かべることが多いですが「北の大間、西の壱岐勝本」と築地では評価の高いマグロとなっています。
しかし近年では200㎏級の大型マグロが釣れることが少なくなってきており、100kg前後のマグロが多いです。
境港では、まき網漁と呼ばれる漁が盛んです。
まき綱漁とは長さ1,000m程度、深さ100~250m程の網を使い一帯の魚をまとめて漁獲する方法で、本マグロでは一度に100トンもの量が取れてしまうことがあります。大量に水揚げされるため値崩れすることが多い漁法です。
品質は一本釣りやはえ縄漁には劣り、解体や血抜きは水揚げ後に行われるため、酸味やボソボソとした身になる原因となる「身ヤケ」が起こりやすくなります。
出典:近大マグロの研修
まずJAS法では給餌した水産物は全て「養殖」と表示するよう義務づけられていると前置きします。
極端な例ですが、つまり卵から返した稚魚を3年育てたものでも、大海原で100kgのマグロを捕え1日餌を与えて出荷しても、消費者の手に届くときは同じ「養殖マグロ」となります。味や脂の乗りが全く違うにもかかわず同じ養殖と表記するのは賛否が分かれるところです。
我々の業界では「完全養殖」「養殖」「畜養」と使い分けており、
「完全養殖」とはマグロを陸上の生け簀で卵からふ化させ、稚魚を直径30m~50m程の生け簀へ移し、3~4年程の時間をかけて出荷できる大きさまで育てます。さらにその親マグロからも卵が生まれ、卵→育成→親魚→産卵とサイクルが出来ている状態のことです。
国内で完全養殖に成功しているのはまだわずかで、減りつつある天然マグロの水産資源保護を目的にスタートした養殖方法です。
「養殖」とは完全養殖場から稚魚のマグロを買い付けたりして稚魚から育成する方法です。業者は違えど生まれてから漁獲するまで全て人の手が加わっています。成長にかかるスピードは変わらず、3~4年程の時間がかかります。
「畜養」とは海で幼魚(ヨコワ)や脂のあまり乗っていない成魚を捕まえてきて、数カ月~数年間餌を与え育てる方法です。生け簀の中で餌を与えられ運動量が減るため自然とトロの部分が1割~2割程増えると言われています。海外では半年ほどの短期育成が主流です。
ちなみに養殖・畜養されるマグロは高級マグロで無いと採算が合わないため、北半球では本マグロが主流で、南半球ではミナミマグロが主流となります。
ここでは主だったブランドマグロのみご紹介しますが、これ以外にも完全養殖マグロやブランド名のついていない養殖・畜養マグロが多く存在します。
近畿大学水産研究所が1970年に養殖の研究を始め、32年の歳月をかけて2002年に世界で初めて完全養殖に成功した本マグロで、稚魚を必要としている業者へ販売も行っています。
マグロの産卵には24度以上の水温が必要なため奄美大島の事業場で採卵を行います。卵からふ化したマグロは5~6cmになると水槽から和歌山県串本町にある海の大きな生け簀へ移動されます。
水温も14度~夏場でも高くて27度と安定した水温が特徴です。餌は1日2回でサバやアジなどの冷凍魚を解凍し与えます。成長は早く1年後5kg、2年後20kg、3年後に40kg程度になったところで出荷します。
出荷の際は電気の流れる釣り針でマグロが食らいついた瞬間に電流を流して取り上げます。船上で3分以内に神経抜き・血抜き・体温測定・内臓除去などの締める作業を行うため長く鮮度を保ちます。
近畿大学の事業場全体で卵から成魚にまで成長する確率は約1%。天然のマグロの生存率が2000万分の1と言われていることを考えると驚異の生存率で技術力の高さが伺えますね。
日本水産株式会社の完全養殖本マグロです。2014年には完全養殖を成功していたが、2018年の3月にブランドマグロを発表。稚魚が5~7㎝程度になるとグループ会社の西南水産株式会社が持つ各養殖場で出荷サイズまで飼育されます。
イワシやアジの魚粉を加工し「Tセージ」と呼ばれる魚肉ソーセージに似た配合飼料を独自に開発。大きくなったマグロの餌として与えています。
これにより餌用の仔魚の飼育管理が不要になり省人化に成功。さらに水揚げ後すぐにブロックに切り分ける加工と物流体制により、通常のマグロに比べビタミンEが豊富で旨み成分のイノシン酸が2割多くなるように工夫して出荷します。
奄美大島にある瀬戸内町でマルハニチロ株式会社が2010年に民間で初めて完全養殖に成功したマグロです。
ふ化後は約1ヶ月かけて水槽で飼育し、約6cm程度になると沖合の生け簀に放たれます。成長した稚魚は奄美大島だけでなく全国のグループ養殖場へと運ばれ、3~4年をかけて育てられ50~60キロになります。
餌は「モイストペレット」と呼ばれるさまざまな種類の魚にビタミンなどを配合した栄養バランスの良い粒状の配合飼料への切り替えを進めています。この餌はマグロの品質向上はもちろん水質や環境負荷を軽減させることも考えられています。
株式会社ブリミーが熊本の天草で完全養殖している本マグロです。生の魚しか餌にせず、人工餌は使用しません。ワクチンや抗生物質も使わず、潮流が2ノット以上ある場所で育てられるため自然に近いマグロになります。
出荷方法も一本釣りで2分以内に締め、スラリーアイスと呼ばれるジェル状の氷を使用し、冷凍せず生のままで氷温冷蔵しており鮮度を保ったまま出荷されます。
近畿大学水産研究所や長崎県総合水産試験場が提供している人工ふ化させた稚魚を飼育した本マグロで、2010年より事業を開始した東洋冷蔵株式会社が育成・出荷しています。養殖場は和歌山県串本町と長崎県五島市にあります。
稚魚から約3年間育成し、30~50kgになってから出荷しています。
近大マグロと同じ和歌山県串本町にある丸八水産有限会社が作っているマグロです。
1996年にマグロの養殖をスタートさせ、餌や水温などの飼育法・水揚げ後の体温管理・水温管理・出荷方法など、各所に独自の工夫をこらしています。
三重県伊勢町にある養殖場は、国内の本マグロ養殖場としては最東北にあります。
沖縄・南九州にある養殖場と比較すると海水温度が年間平均で7℃低いことと、潮流の早い黒潮のおかげで身の引き締まったマグロに育ちます。
直径50mの円形生簀を4台設置しており他に比べて大きめの生け簀を使用しています。
20~30センチほどの幼魚(ヨコワ)を捕まえて育成。1年魚~4年魚までを年級ごとに分けて管理し、「オーシャンマッシュMS」という抗生物質・抗菌製剤は不使用の粉末配合飼料と自社のまき網船団がその日に漁獲した新鮮なサバやイワシ類を飼料として与えます。
取り上げ後は低酸素水の「ウルトラファインバブル水」と菌の増殖を抑える殺菌氷を使用し、安全に出荷出来るよう工夫されています。
愛知県宇和島市にある水温の低さ・黒潮の早い潮流・水深の深さが養殖本マグロに合う漁場です。
6月〜8月頃徳島沖から宇和海に至る四国沖で一本釣りとまき網漁で捕獲したマグロを30ヶ月以上かけて60~80kgになるまで育て出荷します。
餌は生の魚を使用し、マグロが小さいときはメロード・コナゴ・アジが主流で、大きくなればサバ・オオナゴ・ウルメ・イワシ・サンマ・イカなど一つの種類の生餌に偏らないようにできるだけ多くの種類の餌を与えるようにしています。
地中海のほぼ中央に位置するマルタ共和国では漁場が近いのでマグロを捕獲した後すぐに生け簀に移すことが出来ます。マグロへのストレスが少なく早く餌を与え飼育することが出来るので出荷がその分早くなります。
マルタ共和国付近の海水温は暖かく、11月にならないと下がってきません。身ヤケなど起こらないように細心の注意を払い、一尾ずつ丁寧に取り上げます。
まずは生鮮空輸が11月に始まり、冷凍向けにはさらに水温が下がった12月頃から取り上げます。
1991年に世界で初めての畜養事業が始まり、全世界に技術が広がりました。オーストラリアのポートリンカーンが主な産地です。
1月下旬~2月下旬までに20~30kgのマグロを捕獲し、網の生け簀で4~5月間育成し、脂を乗せて出荷します。こちらもダイバーが一尾ずつ手で丁寧に取り上げます。
1996年に事業が始まり本マグロの蓄養では最大の規模を誇ります。
カタルヘナが主な産地で入荷は安定的。赤身にも程よく脂が乗っており、より天然に近づけるために生け簀で育てる期間を短縮するなどして品質向上を目指しています。
4~6月頃にジブラルタル海峡を通る産卵後の痩せたマグロを定置網で捕獲し、生け簀に入れて育てます。新鮮なイカやサバ等を食べさせて脂を乗せた後に早ければ9月頃に日本へ出荷されます。
バハカリフォルニア半島にあるエンセナーダが主な産地。メキシコ沿岸で6月~8月に巻網で捕獲されたマグロはそのまま海中の生け簀に入れられ、船で約2週間かけて沿岸の生け簀まで曳航(えいこう)されます。
餌はこの海域で水揚げされる生のイワシを与えています。生け簀からの取り上げは1匹ずつ丁寧に引き上げるのでマグロへの損傷は少ないです。海水温が低いため身質が良く、良い物では4~5日ほど色持ちします。
これまでマグロの天然・養殖・畜養・旬・漁法などについて説明を読んでお気づきになられたと思いますが、季節や場所によっておいしいマグロは変わります。
いつでも大間のマグロが最高においしいはずはありませんし、養殖だからと言って絶対に天然に劣る訳ではないのです。
マグロに関して間違った知識を持った友人や知人を見かけたら是非とも教えてあげてください。