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2018.07.31

マグロの王様!本マグロ(クロマグロ)の全てを解説

アバタータロウ

一口にマグロといっても、さまざまな種類がありますよね。そのなかで、もっとも高級で美味しいといわれているのが本マグロとも呼ばれるクロマグロです。

今回は、クロマグロの特徴や名前の由来、生態、食材としての価値、トロはあるのか・・・など徹底解説していきます。

クロマグロの特徴・名前の由来

クロマグロは、スズキ目サバ科マグロ属に分類されます。最高級といわれているだけあって、脂の乗りが良く味も最高です。それではクロマグロの特徴や名前の由来についてご紹介しましょう。

成魚の大きさ

クロマグロの成魚の大きさは全長1.5~3m前後で、日本で水揚げされるマグロのなかではもっとも大きいサイズになります。体重は大きい物で400~500kgにもなり大型サイズに分類されます。

特徴・名前の由来

クロマグロの特徴は、なんといっても「サイズが大きい」ということが挙げられます。ほかのマグロと比べると、胸びれと第二背びれ、尻びれが短いのも特徴です。

クロマグロは漢字で「黒鮪」や「黒真黒」と表記されます。背中が黒いこと、眼が黒いこと、赤黒い身をしていること・・・などから「クロ」が付くようになったといわれています。

学名はThunnus orientalis 、英名ではPacific bluefin tunaと表記します。

日本ではクロマグロのことを「本マグロ」と呼びますが、これはマグロのなかでも一番大きく、味わいもよいため「マグロのなかのマグロ」という意味を込めてこのように呼ばれているようです。クロマグロはマグロ界の王様といえる存在なんですね。

本マグロは略して「ホンマ」と呼ばれることもありますが、このほかに地方では次のように呼ばれることもあります。

イモシビ・ウシシビ・ウメゾメ・ウラマワリガツオ・オオシビ・オオタロ・オオマグロ・カタマ・カンバ・クロ・クロシビ・ゴトウ・ゴトウシビ・ゴンタ・ゴンダ・サンダ・シビ・シビツ・シビツユ・セナガ・デンボ・デンボク・トウツケ・トヨマ・ニンダ・ハツ・ホンシビ・マゴロ・ムツ・ヤツ・ヨツ・ヨカゴ・ヨツワリ

 

またクロマグロは成長段階によって、業界では次のように呼ばれて分類されています。

  • コメジ→メジ→マグロ→オオマグロ (主に関東地方)
  • シンマエ→ヨコワ→コビン→マグロ  (主に関西地方)

クロマグロは成長とともに名前が変わる出世魚です。クロマグロの幼魚は、関東ではコメジ、関西ではヨコワと呼ばれます。その他、幼魚の地方名として次のように呼ばれることもあります。

カキノタネ・コシビ・コチウ・コビン・シビコ・シンコ・シンマエ・ヒッサゲ・マメジ・メジカ・メジカッコ・ヨコカワ

クロマグロの生息域・水揚げ場所・漁獲法

クロマグロはどの辺りに生息しているのでしょうか?主な水揚げ場所や漁獲法などもご紹介します。

生息域・産卵の時期

クロマグロは北半球の熱帯・温帯の海域に生息していて、南半球にはほとんど生息していないといわれています。

産卵は5~8月の春~夏にかけて行われ、台湾から沖縄の海域が産卵域とされているようです。日本近海の場合は7~8月に産卵します。

クロマグロは、産卵されてから1日で孵化し黒潮や対馬海流に乗って北上し、1歳になるくらいまで日本沿岸を回遊し力をつけます。その後、太平洋を渡りアメリカ西海岸で成熟すると、また日本近海に戻って産卵を行っているのです。クロマグロが泳ぐ距離は相当なものになりますね。

クロマグロの寿命は20年以上ともいわれていて、これもマグロのなかではもっとも長寿になります。

主な水揚げ場所

世界でクロマグロの水揚げ量が多い国・地域は次の通りです。

  • メキシコ
  • 台湾
  • アメリカ
  • ニュージーランド
  • エクアドル
  • マルタ
  • スペイン
  • フランス

クロマグロは太平洋クロマグロと大西洋クロマグロに分類されますが、太平洋クロマグロの漁獲量は日本が世界第1位となっています。次に、日本の主な産地をご紹介しましょう。

  • 長崎県
  • 島根県
  • 青森県
  • 北海道
  • 静岡県

クロマグロは遠洋漁業で延縄・巻き網・定置網で水揚げされます。釣り人による一本釣りも有名ですね。マグロの漁獲量では全体の8%がクロマグロに当ります。

個体数の減少・絶滅危惧種

クロマグロの漁獲量は年々減少傾向にあります。しかし、その美味しさから日本人を中心に大量消費され、高値が付くことから乱獲のターゲットにもなっています。大幅な個体数減少から、2014年には国際自然保護連合によって太平洋クロマグロは絶滅危惧種Ⅱ類に指定されたほどです。

ちなみに「絶滅危惧種Ⅱ類」とは現状の問題が解決されない場合、近い将来「絶滅危惧種Ⅰ類(近い将来絶滅する可能性が高い種)」になる恐れがある種のことを指します。大西洋クロマグロは2011年に絶滅危惧種Ⅰ類に指定されていて、太平洋クロマグロよりも個体数の減少が深刻になっています。

養殖

クロマグロの養殖は稚魚を捕まえて蓄養し市場へ出す、という方法ですが、結局自然に生息している稚魚を捕まえてしまうので個体数の回復という意味では、いい方法とはいえないようです。そこで日本では、受精~産卵~稚魚養育という完全養殖のサイクルを30年以上かけて確立することに成功しました。

現在は安定して生産を行うことができていて、民間企業のマルハニチロでも完全養殖に成功し出荷することができています。クロマグロの完全養殖がこのまま軌道に乗り、個体数の減少につながることが望まれます。

 

食材としてのクロマグロ

マグロの中で、もっとも美味しく高級品といわれているのがクロマグロです。その希少価値や色から「黒いダイヤモンド」や「マグロの王様」の異名を持っています。それではここからは、クロマグロを美味しい食べ方や栄養素などをご紹介しましょう。

年間通して入荷しますが、クロマグロの旬は冬。また、若魚であるメジマグロも冬に旬を迎えます。

 

味わい・調理方法

マグロの中のマグロ、最高級の味わいともてはやされるクロマグロ。身は赤身・中トロ・大トロに分けられます。

赤身には、ほかのマグロよりもコクがあり旨みがギュッと詰まっています。そのなかにわずかに酸味を感じることができ、身もしっかりしています。

中トロは赤身の旨みにほどよく脂が加わり、甘みが増します。大トロはさらに脂が増し、口の中に入れた瞬間とろけてしまうほどです。大トロに含まれる脂はかなりの量なので、あまり多くの量は一度に食べられないほど。一尾からとれるトロは15%、さらにそこからとれる大トロは5%ほどともいわれることからも、トロの希少価値が分かりますね。

今では高級食材とされるマグロのトロですが、戦前はアラに分類され捨てられていたといわれています。戦後に食材としての価値が高まり、高値がつくようになりました。

ちなみにマグロのなかでトロがあるのは、今回ご紹介しているクロマグロ、そしてミナミマグロとメバチマグロを合わせた3種のみです。

クロマグロの味を楽しみたい場合は、やはり刺身でいただくのがよいでしょう。赤身・中トロ・大トロと部位ごとに異なる味の変化を楽しんでみてくださいね。また、マグロの漬けは元々クロマグロを使って作られたともいわれていて、こちらもオススメです。

そのほか、刺身・やまかけ・なめろう・煮つけ・あら煮・ソテー・カルパッチョ・かぶと焼きなどでもおいしくいただくことができます。

栄養

クロマグロは鉄分のほか、ビタミン・ミネラルが豊富に含まれて栄養価と脂質が高い食材です。ビタミンの中でもDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を多く含み、成人病の予防に効果が期待できます。

クロマグロの体内には少量ですが水銀が含まれていますので、妊婦の摂取量が制限されています。厚生労働省で定めている妊婦のクロマグロの1週間当たりの摂取量は80gです。

 

クロマグロの選び方・価格

活きがよく美味いクロマグロを選びたいときは次のポイントに着目しましょう。

  • 眼が澄んでいるもの
  • 身にハリがあるもの
  • シミや黒ずみがないもの
  • 下に敷いてあるシートの赤いにじみが少ないもの(切り身)
  • 身の色が鮮やかで赤色が濃いもの(切り身)
  • 脂の筋が均一なもの(切り身)

刺身で食べたい場合は、なるべく「さく(かたまり)」で購入し、食卓に出す直前に切った方が美味しくいただくことができます。

ほとんどが冷凍して輸入したものを解凍しているので、切り身を選ぶ場合は下に敷いてあるシートに水分が出ていないか、にじみがないかなどを確かめましょう。

価格・卸値

クロマグロといえば、正月の初セリで高値で取引されることでも有名です。本場と言われる青森県大間のマグロには1億5000万円以上の値がついたこともありました。初セリはご祝儀相場となりますが、この時はかなりの値がついたので人々を驚かせました。

マグロの王様「クロマグロ」はぜひ生で!

本マグロと呼ばれ高級品として扱われているクロマグロですが、絶滅が危惧されるほど個体数が減っていることが分かりましたね。日本では完全養殖に成功していて、その研究は海外からも注目されるほどです。消費量の多い国として、これからも養殖の研究には力を入れてほしいですね。

クロマグロは赤身・中トロ・大トロと3つの美味しさを楽しめるマグロです。ぜひ脂ののった冬の時期に、生鮮もので食べ比べてみてください。